■ The Introduction of the Arts : 展覧会・作品・作家 〜No.1 (2015-04-22)
【展覧会】 "thingworld: International Triennial of New Media Art 2014" ,
【作品】:《 moving objects | no 502 - 519 》(2011),
【作家】: pe lang (ペ・ラング氏, スイス)
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- 【展覧会】:
"thingworld: International Triennial of New Media Art 2014" (会期:2014年6月10日〜7月7日)
北京で3年に1度で開催される中国のメディア・アートの展覧会。
※ (英:triennial トライエニアル, 伊:Triennale トリエンナーレ ) , (英:バイエンナル biennial, 伊:ビエンナーレ biennale ) 。
会場は 「中国美術館」 (北京) "the National Art Museum of China" (NAMOC)。
もともとは2008年の北京オリンピック開催に伴う文化事業として開催された展覧会の “Synthetic Times: Media Art China 2008”
を端緒とし、現在までに2回開催され、去年の2014年で3回目の開催となる。今回は世界22カ国から招聘された作家や団体全65人と、
彼らによる58作品が展示された。中国国内からは9名の作家が参加した。2014年では日本からの参加はなかった (出典 ) 。
(第1回) “Synthetic Times: Media Art China 2008” (2008年)
(第2回) “transLife: International Triennial of New Media Art” (2011年)
(第3回) "thingworld: International Triennial of New Media Art 2014" (2014年)
- 【作品】:《 moving objects | no 502 - 519 》(2011) , 展覧会WEB内の作品紹介ページ
上記展覧会で展示されたスイスの作家 ペ・ラング氏 Pe Lang (1974〜, スイス) によるキネティック・アート。
作品《moving objects | no 502 - 519 》 (「運動体:no 502-519 」) は、
上下に配置された2枚の銅板の間にうまれた空間において、
一つの小さな金属の輪が浮遊するものであり、モーターで制御された磁力によって、まるで「魔術による振り付け」のように動く。
作品は「2枚の銅板」、「金属の輪」、「モーター」を一つのユニットとし、それを幾つか複製して並列配置し、
それらを同時に動作させることで、動きのバリエーションを生んでいる。
また、作品の概観は機能性によってのみ構成されており、そこに一切の恣意的な装飾性はない
(出典 ) 。
- 【作家】: ペ・ラング氏 Pe Lang (1974〜, スイス)
ミニマルなキネティック・アート作品を制作している。そこでは、われわれを魅了する優美な動きの背後で、機械的動力が制御されている。
かれの動的な彫刻やインスタレーションは、装飾性というよりも、機能性に配慮された小さなユニットが複数用いられ、
それらが規則正しく配置された構造と、それと共に、ハンドメイドな趣を持つ機械システムとの融合が見られる。
彼は2005年以来、さまざまな世界的な受賞歴をもち、ブリュッセルやサンフランシスコの美術館から委嘱をうけたり、
東京の ICCをはじめ、世界各国の主要な美術的拠点で展示を行なっている
(出典 ) 。
- 【 ※ 各自、この作品等をどう感じましたか? 】 (以下はその一例)
金属のシリンダーの不思議な動きに目を奪われるが、しかし、芸術的意義としては、むしろ、剥き出しのメカニズムの呈示にあると思われる。
シリンダーの動きに内在するものは、あくまでも科学的な興味に基づく意義であり、それは芸術的な意義とは言い難い。
なぜなら、シリンダーの動き自体には、自然のミメーシス (模倣、mimesis) への意識や、それに基づく美の表現への意図が感じられないからだ。
したがって、この作品の芸術的な意義とは、「美しい芸術」のアンチ・テーゼとしての、機械システム自体の機能美の呈示とも解釈できるが、
そうであれば、およそ19世紀的なそのコンセプトは、全く目新しいものではないとも言えるだろう。
しかし、結果として、この作品からは決して凡庸は感じられない。そして誰もが、これを科学博物館での科学的現象としてではなくて、
美術館における芸術作品として、しばらく見入ってしまうことだろう。そうさせるのは何故だろうか。
それは、おそらく、この剥き出しの機械の美を呈示することの〈必然性〉ゆえではないか。そして、その必然性を作っているのが、
やはり、シリンダーの極めて新鮮な動きと思われる。シリンダーの動きが凡庸であれば、この剥き出しの機械の展示は成立しないだろう。
さらにまた、複製されたユニットが複数同時に動作していること、そして音の側面からも、メカニズムとしての美の存在感が強められている。
科学的な知見が芸術的意義に作用する可能性を考える上でも、この作品からは得るものが多いと思われる。
女子美術大学大学院 「インタラクティブ空間演習」(2015年度)
担当:石井拓洋 ishii05042(a)venus.joshibi.jp
(2015-04-21更新)